平成8年第4回葛飾区議会定例会一般質問

平成8年一般会計補正予算について

 今回の補正予算案でたいへん目に付くのが、歳入の特別区民税の14億9千2百万円に
のぼる大幅な減額補正です。これで連続4年間、この時期になると特別区民税は毎年減額
補正しているわけで、何と言って良いか解りませんが、それだけ歳入の見通しが不透明に
なっているとも言えますし、また予算当局にももう少し正確な歳入見通しをもっていただ
きたいと注文を付けたい気もいたします。
 いずれにしても今回は、年度途中に大きな制度的改変があったとか言うわけでもありま
せんので、ではどうして減額補正に至ったのか、大変気になります。そして、今回の事柄
の背景にある問題を深く理解することによって、来年以後の歳入の正確な調定と財政運営
に万全を期していただきたいという思いで、いくつかの質問をさせていただきたいと思い
ます。
 さて、今回の減額要因にはどのようなものがあったか、また、そうした要因を踏まえて
来年度の調定に当たりどのような点に配慮をすべきかと言いますと、
先ず第一に、土地・株等の譲渡所得に対する分離課税分が当初調定額を大きく下回る見込
みであることのようです。当初調定額は約14億円であったものが、10月1日現在の調
定では、総件数で919件、額で10億1千6百万円の調定額となり、差し引き3億8千
4百万円のマイナス、となるようです。

 この調定の背景は、前年の平成7年の実績が、件数で976件、額で15億6千2百万
円であったことを踏まえ、8年度当初調定では、地価の減少傾向や売買の件数の伸び悩み
を予想して、平成7年を10%下回る数字で当初調定をしたものの、実際はそれをはるか
に下回ってしまったと言うところです。
 この背景には、言うまでもなく地価の下落により、土地の売買による譲渡所得が計上し
にくい土地取引が増えていると言えます。また件数にしても引き続き下がっていると言う
ことは、地価の下落が買い手の立場からは、買いやすいかも知れませんが、売る側からは、
みすみす譲渡益が期待できない土地取引は心理的にもやりにくいと言うことが言えるのか
も知れません。
 いずれにしても、地価の下落は今尚続いているわけであり、来年度もこうした譲渡所得
の伸び悩みは続くと思われますので、調定に当たっては、より厳しい見方で対処する必要
があると思いますが如何でしょうか。関係理事者の見解を求めます。

第二は、社会保険料率アップに伴う所得控除額の増による税収減が予想以上であったとさ
れています。具体的には、調定額ベースで、前年平成7年度に比べ、普通徴収分が3千5
百万円、特別徴収分が2億5千4百万円、合計で2億8千9百万円の減額が見込まれるよ
うです。この数字は当初調定ではもともと予想していなかったものであり、全く新しい調
定額の見直し要因です。もっとも、当初予算編成当時、すでに社会保険料率の改定が狙上
に上っていましたが、数字が特定できないため調定に加味するに至りませんでした。従前
であれば、こうした減収要因も一定の所得の伸びによる税収の増に隠れて表面化すること
はありませんでした。しかし、区民所得が伸び悩む今日では、全般的な税収増が期待でき
ませんから、少しの減収要因もすぐに顕在化すると言うことだと思います。今後の調停作
業のなかでは、決して見落としてはならない事柄であると思いますので、課税当局に特段
の配慮を求めます。
 それに関連して、実は今年度、国民健康保険料の料率改正があったわけですが、今回の
減額補正の例を踏まえれば、来年度の特別区民税の税収の増減に、今まで以上に直接に影
響が現れると思われます。従って、今回のような見落としがないよう十分注意を払って調
定作業に当たっていただきたいと思いますが、関係理事者の見解を求めます。

第三に、区民所得の伸び悩みが予想以上に大きかったと言えるのではないかと思います。
先ずこの実態を数字的に示す例として、平成7年度の給与所得総額の給与収入総額に対す
る割合をみると、給与所得総額が1389億9千6百万円で給与収入総額が2003億2
千6百万円、この割合が69.38%になります。平成8年度も同じ水準になろうと見込
んで当初調定を行ったようですが、実際の平成8年度の数字は給与所得総額1365億8
千4百万円、給与収入総額は1997億6千2百万円となりました。同じく両者間の割合
は、68.37%になります。区民の給与所得と給与収入の割合が全体で平均1%動くと
言うことは大変大きな変動です。これらの数字から、給与収入が減少しているだけでなく、
それ以上に給与所得の減少が目立っていますが、このことは、より高い所得階層の割合が
減って、低い所得階層の割合が増えたことを表しています。
 これらの区民所得の伸び悩み傾向は、数字的には平成6年から7年にかけて発生したと
解釈されるわけですが、また様々な統計から、平成8年度の給与収入についても、平成7
年度よりは格段に伸びがあるとは言えないわけで、前述した所得・給与の割合、68.3
7%は来年の区民税収入の調定の際も、考慮しなければならない指標であろうと思います。
つまり端的に言えば、給与収入の高さが減少しないのに税の調定額は減少するという実に
構造的な変化が生じているわけで、今後の税収環境を取り巻く厳しさを暗示していると思
います。本区理事者としては、こうした実態をどのように受けとめているか、率直な感想
をお示しいただきたいと思います。

第四に、納税義務者数が明らかに減少しています。特別徴収の納税者数で見ると、平成7
年が21,527人、それに対して平成8年は7月1日現在の調定で19,999人、差
し引き1,528人の減少になっています。当初調定ではこれほどの減少があるとは予想
していなかったようですが、事態は急迫しています。葛飾区の人口動態統計調査でも、2
0歳以上60歳までの就労人口が過去2〜3年がピークであることを示していますが、い
よいよそれが納税義務者数の上で明瞭に現れてきたと思います。もっとも経済不況が、そ
れが顕在化するのを早めたと言う面があるかとは思います。こうした傾向はすでに予想さ
れていたとは言え、実際に目の当たりにするとやはり厳しいものがあります。
 今回の特別区民税の減額補正に至った要因とその背景を総括して言えば、従前は安定し
た名目上の区民所得の伸びや納税義務者数の増加で、景気に多少影響される部分があった
としても、特別区民税収入は比較的堅調に伸びてきました。そのため年度途中で制度的な
改変があって、多少の調定見込みの誤りがあっても、全体の伸びの中で目立つことなく過
ごすことが出来ました。
 しかし、今日では当初調定自体が、ギリギリ目一杯の数字を出している上に、また絶対
的な名目所得の増が期待できないために、税制やその他の制度的改変、就労人口数の減少
などの社会的要因、そして所得階層の分布における構造的な変化などが税収に直接影響を
及ぼす事態になっています。従って、課税当局としては、こうした様々な要因を全て抜か
りなく考慮し、税収の調定に当たる必要があります。どうか今回の事例の背景を十分理解
し、来年度へ向けて万全を期していただきたいことを申し上げ、区長の見解をお尋ねした
いと思います。

 ところで、今回の減額補正を財調と関連して考えると一体どうなるかについてお尋ねし
たいと思います。
 聞くところによれば、今回の減額補正は、本区に限ったことではなく、23区はおしな
べて調定額の変更による減額補正のやむなきに至ったと言われ、その総額は合計で約30
0億円に及ぶと見られています。こうした基準財政収入額の減少により財調交付額は当然
増加するわけですが、果たして今年度の財調フレームの中で治まり切れるのであろうかと、
いささか心配になります。一体見通しはどのようになっているのでしょうか。ご見解をう
かがいたいと思います。
 一説では、本年度の財調の当初算定残が、約200億円あり、その後、住専がらみの不
良債権を関係金融機関が大半を有税償却したため、都税レベルでは総額で約1000億円
ほどの法人住民税収入の増が期待されると言われています。これの財調への跳ね返りが約
200億円と見込まれるようで、算定残と合計すると基準財政収入額の減少を何とかカバ
ー出来そうだとされていますが、果たして実際はどうでしょうか。これらの話は、いまだ
非公式なものであり、財調の再算定の段階にならないと確定的なことは言えません。それ
でなくても、平成5年、7年と2年間にわたって調整三税の減収から財調原資が不足し、
都の一般会計から借り入れる形で財調制度を何とか維持しているのが実状です。今回にし
ても、たまたま予期しない有税償却があったから、何とかなりそうだと言う見通しがある
ものの、調整三税が当初の見込み通りであれば、今年度もまた財調特別会計は都の一般会
計からの借り入れを余儀なくされているところでした。現行の財調制度は、今や恒常的に
危機にさらされていると言っても過言ではないと思います。
 従って、今後、都区の役割分担や財源配分の見直しなど、基本的な制度の再調整が狙上
に上る時期もやがて来るのではないでしょうか。こうした状況について区長の率直な見解
をお尋ねしたいと思います。