平成7年第4回葛飾区議会定例会本会議代表質問 区内製造業の経営支援策について バブル崩壊後の日本経済は、今やデフレ経済のまっただ中にあると言うことが、 最近の通説であります。 経済理論上の議論はいろいろあるにしても、今日、共産主義諸国が西側市場経済 に新規参入し、またNICS諸国も経済の大発展期に入り、世界的な経済の大競争 時代に突入していることは事実であります。そうした中で日本が従来保持していた 国際競争力は、構造的にも、また為替の超円高もあって、もはやかつての強さはな くなりました。そして、製造業は大競争時代に生き残るために、安い人件費、低廉 な製造コストを求めて、海外へ生産拠点を移しつつあります。いわゆる産業の空洞 化という現象は、もはや止めることの出来ない大きな流れとなっています。今や日 本の代表的な大手の製造業は海外での生産比率を高めることが、生き残り戦略の大 きな柱となっており、この傾向は今後とも弱まることはないと言われています。 同時に、大企業は、国内的には、リストラというかけ声の下で、下請け各社にコ スト減を求め、下請け企業を選別し切り捨てることによって、コストの削減を進め ています。 そうした戦略が功を奏したのか、9月決算を迎えた大手の製造業はかなり増益し たところも少なくないと言います。 しかし、そうした増益は、前述したように、生産拠点の海外移転した結果であ り、国内的には下請け企業の犠牲の上に築かれていることを忘れてはならないと思 います。 かえりみれば、本区の地域経済の特色は下請け製造業を中心とする住工混在の土 地柄であります。今日の産業空洞化の悪い面を典型的に反映する地域であります。 一部上場企業の業績回復が言われる中で、本区内のある製造業の多くは、軒並み受 注減、製品単価の切り下げに直面し、経営危機にさらされています。 実際、区内各地域を歩いてみれば、ここ数年、昨年は3%の工賃切り下げ、今年 は5%の切り下げと親会社からの要求に泣く泣く従わざるを得ない厳しい中小製造 業の姿に接します。工賃の引き下げはまだ良い方で、発注量が大幅減になって、工 場を閉鎖のやむなきに至った例も少なくありません。 実は、こうした傾向は今に始まったことではないのであります。本区の工業統計 をつぶさに調べてみると、ここ10年前から本区の製造業は衰退の傾向にあること が解ります。 すなわち、従業員の規模別・工場数の経年変化を見てみますと、おおむね昭和 58年をピークに平成5年までの10年間で、先ず工場総数は8,131から 5,811へとピーク時の70%に減り、従業員総数も51,275人から 36,839と約15,000人・70%の減となっています。特に個人事業主の 数は8,105人から4,607人と実に57%程度に減少してしまいました。 そして、更に注目すべきことは、従業員1人当たりの製造品総出荷額でも、昭和 62年の1,675万円をピークに平成5年には1,584万円と平均で5%程の 減となりましたが、一方で従業員一人当たりの給与は338万円から369万円と 約10%の上昇となっています。これは何を意味しているかと言いますと、企業は 売り上げが減少する中で、従業員の給料を引き下げるわけには行かないので、今ま での蓄積を取り崩しつつ何とか雇用を維持していると言うことではないでしょうか。 しかし、こうした状態をいつまでも続けることはとうてい不可能で、いずれ、本格 的なリストラと雇用調整はされられません。まだ統計に表れていない昭和5年以後、 おそらくはこうした矛盾の調整を区内の企業は必死でやっていると考えられるので あります。そして、調整がつかなくなったところから、次々と廃業のやむなきに 至っているのであります。 重ねて申し上げますが、こうした統計の数字を見ても、区内産業の経営支援は 短期的な不況対策というより、構造的な経営危機対策という側面から中長期的視点 に立っての対策が必要であると思います。そして、同時に、雇用問題への対策とい う面もあるのだと言うことを強く訴えたいと思います。 さて、地域経済の振興の問題や雇用の問題は、その時々の経済情勢やその地域の 経済構造に起因するものですから、大きな経済構造の変化に逆らって、一地方自治 体の施策だけで実効を期待するのは無理があります。しかし、経済構造の変化の方 向を見極め、その地域に合った、また変化の方向に沿った施策を進めるのは自治体 の重要な責務であろうと思います。その意味で我が党は、本区の新たな産業振興策 を確立すべきだと、度々訴えて参りました。区としても来年度は工場アパートの建 設や製造業の振興のための新たな計画を策定する考え方のようですが、どのような 方針で望むのか基本的な考え方をお聞かせ願いたいのであります。 第二に申し上げたいことは、新規開業支援融資制度をつくれと言うことであります。 製造業の全体的な退潮傾向の中で、次の新たな産業分野、業種をどのように育て て行くかが、大変重要です。いわゆるベンチャービジネス、新規の起業が望まれて いるわけですが、実際には、日本の経済風土の中では新規の起業は思いの外難しい と言われています。その最大の理由は、資金の問題です。今までの融資制度の中で は、与信機能は経営実績や土地などの不動産を担保にして創出することで由として いました。しかし、そうした今までの与信創出の考え方がもはや現状にマッチしな くなってきていることは、ご承知の通りです。全国の主な都道府県は不動産や実績 だけに頼らない与信システムの創造を民間の金融機関に期待して、ベンチャービジ ネス育成基金に預託資金を出すという形で、各起業家を支援しようとしています。 本区のような自治体が自らそうした施策を進めることは難しい面があるかも知れ ませんが、現在資金を預託している金融機関に対して、土地の担保や経営実績だけ に頼らない与信創造を求めることは、是非とも行って欲しいと思います。 繰り返しますが、本区に意欲的な起業家が輩出しやすい環境を整備するために、 新規開業資金、独立開業資金のための融資制度を充実することが是非とも必要です。 現在の本区の融資制度では、これに対処できていません。従って、融資制度を貸付 金額や金利の面で利用者の立場に立った改善を図るとともに、新規開業についても、 貸し出し可能な制度に改善するよう強く求めるものであります。 第三に製造業の経営支援策を充実せよと申し上げたいと思います。 製造業支援のポイントは、技術的に優れた製品の製造が大事であることは言うま でもありませんが、今日ではそれだけでなく、そうした製品が市場で消費者に受け 入れられるまでのプロセスまでを含めたフォロー、すなわちマーケッティングなど のソフトの分野で支援して行くことが重要になってきています。 今まで本区は、融資制度や工場アパートの建設などどちらかというとハードな部 門の経営支援が中心であったと言えるのではないでしょうか。また、中小の製造業 も製品作りまでが精一杯と言うところで、市場分析や販売戦略まではとても手が回 らないのが実情でした。そこで、墨田区が手がけているような、販売戦略まで含め たマーケッテイグを支援するような新たな分野に施策を展開して欲しいと思うので すが、如何でしょうか。