平成7年第1回葛飾区議会定例会本会議代表質問

(1)阪神大震災と本区の震災対策について

次ぎに震災対策についてうかがいます、

 去る一月十七日に発生した阪神大震災は、死傷者が五千人を超え、被害総額は十兆円に
達するという戦後最悪の地震災害となったわけでありますが、改めて犠牲者のご冥福を
お祈り申し上げるとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げるものであります。
また、被災地の一日も早い復興を願ってやみません。
 また、本区としても、被災者の救援のために、災害用備蓄物資の提供などの救援活動を
行なってまいりましたし、その他、多くの区民の方が義援金を寄せていただきました、ご
協力をいただいた多くの方々に感謝と敬意を表する次第であります。
 我が党としても、被災者救援のための募金活動や生活必需品の提供に微力ながら取り組
んで参りましたが、現地では避難生活がまだまだ続いている現状では、今後とも必要に応
じて救援活動を進めなければならないと思います、本区としても所要の救援体制を引き続
き継続していただきたいと思います。
 いずれにしても、震災の被害の深刻さが判明するに連れ、改めて地震災害の恐ろしさと、
過密化した都市における防災対策の重要さを認識させられました。我々首都圏に住む者と
しても、関東大震災の歴史的経験を持ち、六十九年周期説とか、七十三年周期説とか言わ
れて、首都直下型の大地震の来襲を懸念しているわけでありますが、これは決して他人事
ではなく、明日はわが身という思いで、今回の阪神大震災を受けとめているのであります。
 私自身としても、「我々が生きている間に首都圏直下型大地震は必ず来る」と考えてい
ますので、今回の震災経験を決して無駄にすることなく、いずれ来るであろう首都圏震災の
対策に資する上からも、今回の震災の実態とその対処の実際をこの目で確かめようと、去る
二月十二、十三日の二日間にわたって、被災地神戸市を視察・調査させていただきました。
  被災後一ヶ月がたとうとしていながら、街は瓦礫に埋まり、住宅地では地震直後の状態が
そのまま手つかずで放置され、復旧のメドすら立たない深刻な事態を目の当たりにして、
ただ茫然と立ちすくむばかりでしたが、被災者の方といろいろお話をさせていただいたり、
神戸市の職員の方や神戸市議会議員の何人かと意見を交換することが出来て、震災対策上の
貴重な教訓を得ることが出来ました。
 それらの事柄と、本区の地域防災計画の内容を比較して、問題点と思われる点を取り上げ、
いずれはやってくるでしょう首都圏直下型の大震災に、万全の対策を強く求め、区長及び
関係理事者に質問をするものであります。
 
 今回、私が被災地で最も調べたかったことは、被害の物理的な程度や内容もさること
ながら、それ以上に、二十万人を超える被災者が避難所で避難生活を余儀なくされている
わけですが、それらの人々を支える救援行政とは一体どういうものなのか。二十万人の人を
行政が直接生活支援するというのは具体的にどういうことなのか。神戸市の行政が何を担い。
県や国の役割分担がどうであるのか、また民間のボランティア、企業はどうかかわっている
のかということでした。
 これらの詳細については、いずれ震災復旧が進んで、関係資料の整理が出来れば公表され
ることになるでしょうが、ともかく、実際の状況を少しでも掴みたいという思いで、いろ
いろ現地をまわってみました。
 そして、現場で実際に接したこと、関係者にうかがったことを通して、本区の地域防災
計画の改善すべき点と思われる部分を指摘したいと思います。

先ず第一に防災情報システムの強化ということであります。
神戸市の防災関係者と会って、開口一番言われたことは、「防災行政無線の中継基地が
地震で破損し、使えなくなってしまった。自治体行政の立場から言って、対策本部と災害
現場との情報交換が円滑に出来るかどうかが救援対策をスムースに行う上での最大のポイン
トである。」ということでした。
 後で聞いた話では、当初は何処に何人ぐらい避難しているのかさえ、対策本部では、
なかなか解らなかった、「電話が不通になって、被災状況の把握が難しくなった。しかも、
関係情報の量は発災直後よりも、その後の救援活動が進めば進ほど情報量が多くなると言う
ことで、全体の防災情報システムを再検討しなければならない」と、語っておりました。

 このことは、当初から専門家からも指摘されていた点ではありますが、現実にそうした
事例が発生してみると、本区の震災時の通信システムは、大丈夫だろうかという心配があ
ります。本区の場合は、どの程度の震度にまで耐えられるようになっているのでしょうか。
本区の地域防災計画では震度6の地震を想定しています。耐震設計の程度はおそらく全国
共通でありましょうから、「震度7」というような地震では、おそらく本区の防災行政無
線の固定系屋外子局も、耐えられず破壊されてしまうのではないかと危惧されます。耐震
強度を高めるよう見直しを求めるものでありますがいかがでしょうか。
 また、双方向通信が出来るような無線通信システムを災害対策本部と各避難場所、そして、
区内の主な避難所に設置する必要があると思います。現状では、半固定型のものが各出張
所に、移動系の車載型のものが20台ありますが、これを拡充すること、特に避難所にも
設置する必要があるのではないかと思いますがいかがでしょうか。
 加えて、あらゆる情報メディアを活用できるよう日頃から、準備をしておくことが大事で
あると思います。今回神戸市では中核都市であるからでしょうが、サンテレビ、AM神戸、
Kiss-FM、NHKラジオの四つの放送メディアが生活救援情報を毎日流し続けましたが、
これが被災者の救援活動にどれほど大きな力を発揮したか計り知れません、また後には、
5番目のミニFM放送メディアもスタートしました。
 東京のような大都市地域では、住民に身近な救援行政の実施主体が各区になると考えら
れますが、各区が独自の放送メディアを保有することは難しい状況でした、しかし、七年
度の予算で地域FM放送の調査費が計上されるのは、防災対策の上からも大変意味のある
ことだと思います。
 また、兵庫県や神戸市の広報課は災害対策本部からのニュース紙を頻繁に出し続け、
各行政機関の救援対策を被災者に知らせ続けています。その他、ファックス通信やパソコン
通信の有用性も指摘されています。災害救援活動はまさに情報戦であると言っても過言では
ない状況であったと思います。本区もこうした今回の例を参考に防災情報システムの強化・
拡充に努めるべきであると思いますがいかがでしょうか。

それと、行ってみて分かったのですが、今回神戸市は直接的な救援行政の他にも、行政の
各部がそれに関連する多様な行政事務に忙殺されていました、災害復旧事業は当然として、
緊急的な広報誌の発行や市独自の緊急資金貸付事業に始まって、死亡者の埋葬許可の事務や
罹災証明の発行、また福祉事務所的には障害者や高齢者の緊急介護と収容、教育委員会的
には学校の維持管理や授業計画の変更などあらゆる行政分野で、定常業務の範囲を大きく
上回る臨時の事務が発生していました。考え見ればこれは当然のことで、避難生活者が
発生すると言うことは、既存のすべての行政分野で新たな仕事が発生すると言うことです。
私は、防災訓練とか震災対策というのは、本当から言えばこうした点にも日頃から配慮して
おく必要があることを、つくづく実感させられました。もちろんこうした事柄は、防災
計画の中に謳っておく性格のものではないと思いますが、防災訓練の一貫として、行政上
の図上演習と考えて、実際の震災時を想定した仮想の臨時業務のマニュアルを各部が用意
しておくことを提案しておきたいと思いますが、区長の見解を伺いたいのであります。
 実は、もう一つ気になることがあります。それは今回の例で、神戸市の旧庁舎の6階
部分が崩れてしまったために、その崩れた6階部分だけでなく、旧庁舎全体が使用不能に
なってしまったことであります。その中に神戸市水道局や建設局など、災害復興に重要な
セクションがあり、急遽近くのビルの空き室を借りて、移転する羽目になったのですが、
復興のための関係資料の取扱いに大変支障が生じたという事例がありました。
 本区の庁舎にしても、旧庁舎のピロティー部分が耐震性が低いといことで、ずいぶん
心配されています。もし仮に、こうした部分に破壊が生じれば、旧庁舎全体が使用不能に
なる恐れは、十分予想されます、旧庁舎の耐震診断を改めて実施し、必要な改善策を講じて
いただきたいと思います。
 また、庁舎の建物に被害があれば、単に建物が使えないばかりか、現在、建設部関係が
蓄積している建物・施設の管理情報すら損なわれる恐れはないのでしょうか、現在稼働して
いる本区のコンピュータシステムは、そうなってもきちんと、動くのでしょうか。はなはだ
心配であります。
 旧庁舎に損傷があっても、大丈夫なように情報処理システムのサブシステムを今のうち
から考えておくべきなのではないでしょうか。見解を伺いたいのであります。

第二に、救援対策の充実ということですが、
神戸市の担当者が言っていたのは、「避難所の運営については、行政だけではとても
出来ない、ボランティアの力が大きい、食事は、救援物資に頼るだけでは限度がある。
民間の食品会社に一日2回配達を委託している。」ということでした。
 また、「緊急物資の搬送については、これも行政だけで、定期的に続けるには限度がある。
神戸市の場合は民間の運送会社に、各避難所への物資の搬送を委託した。」ということです。

私が、今回の阪神大震災で一番感じたことは、地震発生直後の緊急対策も当然大事ですが、
自治体としては、その後の被災者を生活再建させるまで、どのように面倒を見ていくか
ということが、実は思いの外困難な仕事で、仕事のボリュームとしても大変なことである
ということです。
現在の防災計画は災害発生直後の救済対策まではなんとか具体化していても、その後の
被災者救援対策については、都の救援対策に依存していたり、区がやるべきことと
しながらも、具体的に明記されていない部分がかなり見受けられます。しかも今回の
阪神大震災を見ても、それはつとめて、地方自治体の仕事であり、県というより、各市の
対応に依っているということが目立ちました。もちろん、東京都は兵庫県よりは対応が
進んでいると思いますが、それにしても被災者と直接、接するのは、葛飾区であり、
葛飾区の救援行政の見識が被災者の生活を直接左右することを、充分認識しておく必要が
あります。
 つまり、本区の地域防災計画は、後半の一番大切な部分、被災者のある一定期間の避難
生活支援とその後の生活再建という部分が不十分であるということがはっきりしたと思い
ます。
 そこでいくつか申し上げたいのですが、

まず、広域避難場所、及び避難所の運営計画という視点で、防災計画の救援部分の計画
内容を再編成すべきだと思います。現行計画では、一応避難所の設置を計画している
というものの、給水・医療・物資の輸送などと、あくまで機能別の縦割り計画のなかで、
避難所の設置が計画されています。しかしながら、避難所をどのように運営するのか、
避難所に必要とされる各機能をトータルとしてどのように結びつけるのかといった、
避難所や避難場所の運営のノウハウを示した部分が全くありません。
 私自身、神戸へ行くについて、最も関心があったのも、実はそのことでありました、
神戸の場合は、震災後すでに1ヶ月も経っていましたから、自然発生的に避難所の運営
システムが何となく形をなしていました。すなわち、そこでは、一つの居住区という
位置づけで、一つの行政単位と言っても良いのですが、神戸市の行政、ボランティアの
人々、他の行政機関、学校関係者、被災者自身などが、それなりの役割分担を担い、
全体のチームワークで運営がされていました。
 こうしたあり方は、災害の種類や程度、土地柄や季節的な事情によっても、様々に
変わるのでしょうが、一般的なマニュアルを計画の中で明示しておかなければ、いざと
いう時にとても役に立たないと思います。
いずれにしてもかなりの期間、被災者にとってはそこが生活の場になるわけですから、
避難所運営のの善し悪しが、救援活動の成功不成功を直接左右する重要な要素になると
感じた次第です。今回の例を参考にして、内実のある避難所の運営計画にしていただきたい
と思いますがいかがでしょうか、
 
次ぎに仮設住宅計画を明確にすべきだと言うことに関してですが、
 今回の震災で、現在最も歯がゆい思いがするのは、仮設住宅の建設見通しが思うように
立っていないと言うことであります。20万人からの被災者にしても、必要な仮設住宅の
の建設のメドが立たないため、いつまで避難所生活をしたらよいのか、気の毒にも、当面の
生活再建を考えることもできないでいます。兵庫県下に建設用地が本当にないのかどうか、
定かには解りませんが、県下にないのならば、近接した大阪府や岡山県に協力を仰ぐくらい
のことを、政府はどうして手を打たないのか、理解に苦しみます。
 翻って考えれば、本区の防災計画にしても、仮設住宅については、一応は設置主体や
設置基準・設置戸数などが示されておりますが、実際には、区内に何戸建設が可能なので
しょうか、実際の設置可能場所と最大設置可能戸数を計画の中に明示すべきだと思いますが
いかがでしょうか、しかし、私の見るところ、区内での仮設住宅建設可能数は実際には
大変少ないと思います。他県を含めて広域的な建設場所を想定しておく必要があると思い
ますが、如何でしょうか。そして、設置数の基準についても引き上げるよう関係機関にも
働きかけるべきだと思います。

次ぎに地震火災への対策ですが、
 今回の阪神大震災でも、やはり、地震直後、大きな火災が発生してしまいました。
しかも、火を使うことが少ないだろうと予想されるごく早朝の発災であったにもかかわらず
であります。これが食事時であったらと考えると、身の毛がよだちます。これからは、
大都会では、24時間何時でも火を使う人がいて、火災の火種が消えることがないと
考えておいた方が良さそうです。また、初期消火ということにしても、確かに神戸市民は
そうした努力をされました。しかし、ものには限度がありますし、実際には同時多発的に
火災が発生してしまいました。これからは、大震災には、同時多発的に火災が発生する
ものと決めて、火災対策を考えておく必要があると思います。
 私自身、神戸市長田区の火災現場を歩いてみて、見渡す限りの焼け野原に立って、
改めて地震火災の恐ろしさと、近代消防といえども、消防水利が効かなくなった場合の
消防力の無力さをつくづく思い知らされました。
 しかも、長田区の火災現場は、街区として整然と区画されていて、道路率も高く、
火災にはかなり防災能力の高い街であります。葛飾区内にだって、都市計画的視点から見て、
これほど火災に強い街は少ないと思います。それにもかかわらず、大火災の前には無力
でした。自然鎮火の防火帯として役立ったのは、JR神戸線の高架線路、大きな都市公園、
高層の不燃化建築物、そして、幅員十数メートル以上の歩道のある幹線道路でした。
 もし、東京に今回のような地震が発生すれば、火災の発生とその被害は、神戸の比では
ありません、東京都がすでに被害想定しているとおりです。我が葛飾区にしても、あの
長田区の火災の街より、はるかに火災に対する防御力の弱い街であることを決して忘れては
なりません。何か根本的な対策を考えておかないと大変なことにると思うのは、私一人では
ないと思います。
 それに今回神戸市を回って、改めて感じたのは、建物は道路に向かって倒壊するケースが
多いと言うことです。つまり、住宅地の生活道路は倒壊した建物やそれに押されて倒れた
電柱にふさがれるということであります。ですから地震直後は、水道の消防水利がダメに
なる恐れだけでなく、そうした生活道路を消防自動車が通行することが、難しくなり消防
活動はますます困難になります。
 従って、街路消火器や防火水槽の設置拡大だけでなく、現在ある消防水利が本当に機能
するかどうか再点検する必要があると思います。
すなわち消火活動の前提を、まず同時多発的に火災が発生すること、そして、生活道路が
倒壊した建物でふさがれ、消防自動車が通行できないこと、こうした条件で、なお有効に
消防機能が発揮される体制を考えざるを得ません。また、本格的な大火災には、河川水を
消防水利に利用出来るような体制と設備が必要であることも、今回の教訓であったと思い
ますが、如何でしょうか、区長の見解を伺いたいのであります。

 その他、申し上げたいことは沢山ありますが、長くなりますので、項目だけを上げ、
実施方を求めるものであります。

1.先ず初動体制をより強化するため、防災対策要員の確保及び、他の関係行政機関との
    連絡調整を密接に図る体制を整備していただきたいと思います。またその際、自衛隊
   にも災害対策本部に加わってもらうべきことを検討する時期にきているのではないか
と思いますが、いかがでしょうか

2.初動体制に関連して、発災から災害対策本部設置までの過程は水害と地震では全く違う
と思われます。ことに地震の場合は、発災即災害対策本部の設置という事態になるわけ
ですから、発災から災害対策本部設置までの間の緊急対応をどうするのかを、予め想定した
防災計画にしていただきたいことを求めます。

3.ボランティア受け入れ窓口の設置を防災計画の中に盛り込んではどうかと思いますので
検討して下さい。

4.避難所には必ず備蓄倉庫を併設すること、特に小中学校が避難所の場合は空き教室を
備蓄倉庫として活用してはどうか、これはすでに足立区でも具体化しつつあるようですが、
本区の場合も実施していただきたいと思います。

5.備蓄品の中に震災時の倒壊家屋からの救出用道具として、ジャッキー、エンジン付き
チェンソーなどを備えてはどうか。初期救助の段階で非常に有効なことが今回解りました。

6.広域避難場所にへリポートの設置をあらかじめ想定しておく必要があります。検討して
下さい。

7.基幹的な都市施設の安全対策として、区内高架道路の安全点検と危険箇所の早期改修を
関係機関に働きかけて下さい。

8.橋梁の安全点検が必要です。本区は河川で区画されていますから、橋梁の安全確保は、
救援活動上非常に大切です。

9.地盤の液状化による堤防の破壊が危惧されているわけでありますから、区内の堤防の
安全点検を実施していただきたい。

10.河川を利用した水上輸送手段の確保を検討していただきたい。

11.都営住宅の耐震安全点検を東京都に求めて下さい。特に都営高砂団地などは広域
避難場所に指定されていながら、昭和30年代の建物で、摩擦杭の上に建設されています。
安全上問題があります。

12.防災避難訓練のなかの訓練項目として、避難所の設置運営訓練を加えてはどうかと
提案します。

13.震災後に発生すると思われるゴミ・瓦礫の処理については最終的には都清掃局が
処理するにしても、仮置き場が区内に必要になることが、今回の神戸の例を見てもはっきり
しました。そうした仮置き場の設置計画について、防災計画の中では、「都区有地、公園、
グランド、校庭、その他適当なところを選定する」となっています、しかし、実際に何処に
選定するかとなるとなかなか難しいことです。予め関係機関と協議して、ある程度の選定を
しておく必要があると思いますが、如何でしょうか、

以上、多岐に渡って、質問、また提案せていただきましたが、区長の積極的な答弁を求めて
質問を終わります。